国内産業を保護するための規制等については大きく2つのパターンがある。1つは海外からより安い商品・サービスが入ってきて国内産業に打撃を与えるケースである。それを回避するため関税等によって国内産業を保護するパターンである。農業などはその典型例であろう。
もう1つはその性質から考えて海外との競争は生じにくい産業である。例えばタクシー業界である。こちらは国内のタクシー会社同士の過当競争が問題となる。そこで既存のタクシー会社を保護するために新規参入を規制するパターンである。
一般に需要があれば生産を増やすのが企業活動である。タクシーの需要が増えれば、既存のタクシー会社は保有台数を増やし、また新たなタクシー会社が参入してくる。しかし台数制限等の規制が加えられると、自由な企業活動が阻害され、ひいては消費者の便益も損なう恐れがある。この問題をどう考えるかである。
不謹慎な比較と言われるかもしれないが、タクシー台数制限は漁業における漁獲割り当てと同じ論理なのかなと思う。魚を取り過ぎないために漁獲量に制限を加える漁獲割り当てだが、漁業資源が枯渇してしまっては元も子もないからである。国内の過当競争を回避するための規制の論理は、この漁獲割り当てと同じ論理なのかもしれない。
ただ漁業資源と違ってタクシー自体は枯渇することはない。需要さえ増えれば何台でも生産できる。要はタクシー需要が増えないことが問題なのである。需要が増えない分野において、供給側に制限を加えるやり方が妥当なのかどうか。これはタクシー以外の他の国内競争型分野においても同じことが言え、考えなければならない問題ではないだろうか。
日本シンクタンクアカデミー
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